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売上予測の基礎知識
出店開業前に必要な売上予測。その代表的な手法を解説しています。
(分かりやすさを期すため、一部の用語が著作などと異なっている場合があります)

  1.単純計算法(回転率法・キャッチ率法)
  2.単純計算比較法
  3.市場シェア率法(ハフモデル)
  4.類似店比較法(立地評価法)
  5.重回帰分析法
  6.売上予測とは何か?
  7.売上予測が初めから持つ不完全さと蓋然性

  

1.単純計算法

客席数や店前通行量、周辺人口などに一定の係数をかけて算出する手法です。中でも代表的な、「回転率法」と「キャッチ率法」について概説しましょう。

(A)回転率法
 
【基本式】
月商=客席数×回転率×平均客単価×1ヶ月の営業日数

【具体例】
客席数20席の飲食店で、1日に3回転するとして、平均客単価が1000円、1ヶ月の営業日数が25日だとすると、月商は、20席×3回転×1000円×25日で、150万円という計算になります。

(B)キャッチ率法

【基本式】
月商=店前通行量×来店率(キャッチ率)×平均客単価×1ヶ月の営業日数

【具体例】
営業時間中の店前通行量が3000人、キャッチ率が3%であれば、入客数は90人という計算になります。平均客単価が1000円、1ヶ月の営業日数が25日だとすると、月商は、90人×1000円×25日で、225万円という計算になります。

●メリット・デメリット
これらの手法の良い点は、理解しやすく容易であるということです。したがって、開業出店の入門書などによく紹介されています。飲食店の予測に使われることが多く、FC本部がオーナーに提供する資料などにも、よく見かける手法です。
問題点は、回転率やキャッチ率といった係数の根拠が弱いということです。また、この値を少し変えるだけでも予測値は大きく変わってしまいます。
例えば、回転率法の例でいえば、回転率を2にするか3にするかで、月商には1.5倍もの差が生じます。
さらに、立地要因を全く取り入れていないため、精度はほとんど期待できません。
ですから、売上を予測するというよりは、オーナーや店長が努力目標を設定するための手法として用いた方がよいとされています。
   

2.単純計算比較法

これは、単純計算法の例を、複数の店舗分集めて比較する手法です。

●考え方
   A店の来客数=通行量A×キャッチ率
   B店の来客数=通行量B×キャッチ率
とした場合、予測物件のキャッチ率はA店とB店のキャッチ率の平均値になるか、仮に変動するとしても、A店とB店のキャッチ率の範囲内と考えて予測します。

●具体的な例
   A店来客数(90人)=通行量(3000人)×キャッチ率(3%)
   B店来客数(100人)=通行量(5000人)×キャッチ率(2%)
既存店のデータが上記のように分かっていて、予測物件の通行量が4000人の場合、予測に用いるキャッチ率をA店B店平均の2.5%とします。
したがって予測来客数は通行量(4000人)×キャッチ率(2.5%)=100人となります。
変動があるとしてもキャッチ率2%〜3%の間に収まると考えますので、
来客予測は下限80人(4000人×2%)から上限100人(4000人×3%)の範囲内となるわけです。

●メリット・デメリット
この手法は、比較表などを使って表現するとイメージしやすく理解が容易になります。
しかし、店舗ごとの立地要因があまり加味されない(上記例では「通行量」のみ)ので、精度は当てになりません。この手法もFC本部などが好んで用いています。

●《応用》範囲限定法
単純計算比較法の応用として範囲限定法(経験則法)というものがあります。これは既存店と予測物件を比較する際に、調査者(予測する人)が立地要因を加味する、というものです。
この手法では、経験に基づいて「A店よりは売れる立地だろう」「B店ほどは売れない立地だろう」というふうに判断していきますので、予測値と実績値の大幅な乖離(かいり)を防ぐことができます。
調査者によっては予測を的中させる場合も多いようですが、残念ながら予測結果を記録していないことが多く、統計的な精度を知ることができません。いずれにせよ、調査者個人の経験の豊かさや分析力の確実さが、精度に大きな影響を与えます。
  

3.市場シェア率法

市場シェア率法を端的に表現すると、市場全体の売上を推計し、そのうち自社のシェア率分が自社の売上となるという考え方の予測手法、ということになります。
市場シェア率法で代表的なものに「ハフモデル」と呼ばれるものがあります。これに基づいて解説します。

「ハフモデル」は米国のハフ氏が提唱した手法です。「人は、できるだけ近くて、商品力の高い店舗で購買しようとする」という前提に基づき、人々が、周辺の同業店と比べて、どれだけ自店に来店するかを、論理的に求めるものです。

●具体的な計算ステップ

《ステップ1》
 人々の来店確率=(商品力)^m÷(人々から店舗までの距離)^n
 を自店と周辺同業店について全て算出します。
 商品力には、店舗面積や駐車場台数などを代入します。
 mとnは、商品力や距離のウェイトを補正するための値です。

《ステップ2》
 来店客数=全ポテンシャル×自店の来店確率÷(自店・同業店の来店確率の総和)
 とすることで、自店の来店客数を想定することができます。

●メリット・デメリット
この手法は、論理的な整合性がきちんと取れているので、一般的に誰でも納得しやすいことが特徴です。もともと手計算では不可能な手法ですが、最近のコンピュータの機能向上に併せて、GIS(地理情報システム)などに搭載されていることが多くなりました。
問題点は、まず、集計する範囲を限定する必要があること、計算対象とする同業店を取捨選択しなければならないことです。これらについてあらかじめ基準を設けておく必要があります。
また、閉じられた範囲のポテンシャルを同業店と取り合う、というロジックですから、新業態の店舗や、需要創造型の業種の予測には不向きです。さらに、大型店の予測には説得力がありますが、小規模な飲食店などの予測では、その精度は著しく下がります。立地要因を加味しにくいため精度が上げづらいことも難点です。
  

4.類似店比較法(立地評価法)

この手法では、まず、複数の既存店舗をもとに、売上に影響する立地要因を選びだし、その点数(ウェイト=重要度)を設定します。そして、それらの立地要因と点数から予測対象物件の立地総合点を算出し、立地総合点に応じた予測値を推定します。

●考え方

《ステップ1》
例えば、下のような評価表を作り、既存店を評価します。
   周辺人口 : 1人につき、_点
   視界性評価 : 評価値×_点
   間口評価 : 1メートルにつき_点
   競合評価 : 競合店1店につき マイナス_点
   〜 etc 〜
   立地総合点 : 上記評価の合計=__点
この時、売上の高い店舗ほど立地総合点が高くなるように、かつ、同じ売上の店舗であれば立地総合点も同じくらいになるように、各評価項目の点数を調整します。

《ステップ2》
続いて、下のような既存店の立地総合点と売上のランキング表(対応表)を作成しておきます。
   A店 90点 1000万円
   B店 85点 900万円
   C店 80点 900万円
   D店 60点 600万円
   E店 50点 500万円

《ステップ3》
最後に、予測対象となる物件の立地総合点を算出し、ランキング表から売上を推定します。例えば、物件の立地総合点が70点であれば理論売上はC店とD店の間(約750万円)であろうと考えるのです。

●メリット・デメリット
評価する立地要因とその点数を決めておけば、誰でも簡単に予測できるのがこの手法のメリットです。
ただし、どの立地要因を選び、何点に設定するのかが肝(キモ)ですので、それを担う人間には、立地に関する高度な洞察力と経験が求められます。
予測精度はほぼ担当者に依存するといってよいでしょう。客観性や科学的視点はやや欠けるものの、次善の手法として採用しているチェーン企業はあります。
  

5.重回帰分析法

「重回帰分析」という統計解析によって、多数のサンプル(既存店舗)から理論売上を算出するための多項式(モデル式)を作る手法です。「重回帰分析」そのものはマーケティングや医療、その他広範な分野で知られています。
多項式は、売上(目的変数)を構成する複数の要因(説明変数)と、それに対応する係数、定数項からなります。そして、統計的に処理することで、理論売上と実績の誤差が最少になるように、要因を取捨し、係数と定数項(切片)を決めるのです。

●基本式
    理論売上=(要因A×係数A)+(要因B×係数B)…+定数項

●具体的な例
例えば、既存店の売上を目的変数にし、立地要因(ここでは「店舗面積」「交通量」「周辺人口」「競合店数」など)を説明変数にして重回帰分析を行います。すると、立地要因それぞれに対応した係数と定数項が算出されます。それらを仮に、「3」「0.5」「0.1」「−2」、定数項を300とします。つまり、

理論売上=店舗面積×3+交通量×0.5+周辺人口×0.1+競合店数×(−2)+300

のような式(モデル)が作られるのです。この式さえあれば、その物件の立地要因をあてはめるだけで、理論売上を算出することができます。

●メリット・デメリット
「重回帰分析」はエクセルなどの表計算ソフトにも搭載されている機能なので、パソコンの普及とともに、こうした手法による予測がかなり一般的になってきました。
この手法のポイントは、統計処理するので、精度を数字で把握できることです。きちんとデータを揃えて正しく分析すれば、相当に高精度な予測が可能になります。
ただし、問題点もあります。
第1に、多数の既存店データが必要です。類似した立地の店舗が少なくとも30店、もしロードサイド立地と通行人対象立地のモデルを作るのであれば、それぞれ30店が必要です。したがって店舗数の多いチェーン店でなければ現実的ではありません。
第2に、分析者のスキルが低いと、高い確率で「問題点の多いモデル」になってまう、ということです。計算をするのはコンピュータです。しかし、計算結果を考察するのはあくまでも分析者(人間)です。ここを履き違えてコンピュータ任せにすると、本当に重要な立地要因が組み込まれなかったり、経験則に反したモデルになったりしてしまいます。モデルを構築するには専任の担当者が必要となるでしょう。
高精度な反面、モデル構築が難しい。しかし、自店にとって重要な立地要因が統計学的に明らになるわけですから、それなりの規模のチェーンであれば必ず取り組むべき手法です。
  

6.売上予測とは何か?

■売上予測の定義
新規に店舗がオープンする前に、その店舗の売上げ(日商・月商・年商)がいくらになるかを、立地上の確かな事実を基に、論理的(できる限り科学的、できる限り統計学的)に導き出し、知っておくこと

■売上予測に期待されること
精度

■売上予測が成立する条件

1.業種・業態として、店舗のフォーマットが固定的に確率していること
  これを知る手掛かり
 (1)売上の時系列変動
 (2)競合店出現時の影響度合い
 (3)業種・業態の目に見える変化

2.店舗が、極めて類似性の高い立地に出店配置されていること
  

7.売上予測が初めから持つ不完全さと蓋然性(=確からしさ)

売上予測とは、
(1)既存の店の商圏や立地などのデータ(以下ひとまとめに「立地データ」と呼ぶ)と、それぞれの店の実績売上との関係式をつくる
(2)新規出店予定物件が見つかったときに、その物件の立地データを揃え、このモデルに当てはめ、理論売上を試算する
という2つの手順で予測することをいいます。
すなわち、売上予測は、あらかじめ店舗の実績があることが前提となります。現在の売上と立地データを基にした、「もし現在ここに店舗があったとしたら、○○円の売上である」という推定です。
従って、「ここに建つ店は、将来、○○円の売上が望める」という未来予測ではありません。未来予測をするのであれば、単に立地のデータだけではなく、景気の予測、チェーン店の新規商品導入計画、テレビCMなどの計画、はては店長・オーナーの店舗運営計画なども予想しなければならなくなります。立地の要因だけでは済まないのです。
特に、景気の予測は経済の専門家といえども手に負えないほどの難解さが伴います。未来のことは、残念ながら何人たりとも確かなことは言えないでしょう。
また、売上予測は、「加盟店主や店長の力量予測」でもありません。往々にして、「どうして、こんな所で」というような立地で高い売上を確保している店舗があります。これは、加盟店主や店長の地道な営業努力が功を奏しているせいであると考えられます。とはいえ、こうした努力は、数値化が極めて難しいのです。どんな活動をどれだけやるといくら売上が上がるかという具体的データが必要ですが、こうしたデータをきめ細かく集めることは至難の技です。
従って、売上予測は、加盟店主や店長がマニュアルに従い、通常の標準的運営(オペレーション)を行ったときの売上を予測するにすぎません。

一方で、実際の売上予測では大きなパラドックスに直面することがあります。
それは、売上予測モデルをつくる際に起きます。一方で、分析にかけるデータやサンプルを増やさなければ、統計的な偏りが起きてしまい、確かさ(精度)が下がってしまいます。しかし他方で、データやサンプルが多くなればなるほど、分析する作業は膨大になってしまい、やり方によっては何が何だか訳が分からなくなるほど複雑化するというパラドックスです。
精度アップにはデータ量と分析量におけるパラドックスを解決しなければなりません。
そのため、当社では、モデルに使うサンプル店舗数は最低30店舗から50店舗としています。これは売上を説明する要因を5ないし7くらいに絞っているからできることであり、本来はもっと要因があるので増やしたいところです。しかし今度はデータ収集に途方もない時間と労力が必要になり、現実的でなくなります(データ収集だけで3年もかかると言ったらだれも着手しないでしょう)。
常に、そうした現実的な制約の下で売上予測モデルを構築せざるを得ないということです。その意味で、売上予測はいつも不完全であることを余儀なくされます。
しかし、こういう売上予測でも、十分役立ちます。未来予測ではないにしても、極めて未来に近似することができます。加盟店主や店長の運営の力量は加味しなくとも、その予測売上は、十分標準の売上として提示できるものです。もちろん、モデルをつくる上で、サンプルと売上予測コンセプトが十分練られていれば、もっと蓋然性(=確からしさ)をもった予測売上げを算出することが可能なのです。
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